「なんか、エンジン心配だからメタルを点検しました~!」
て電話がありました、聞くとオイルパンを外して、
メタルを目視で点検したそうで!
問題ないのでそのまま組んで、え~それがなんか問題なんですか~って?
これのどこが、なにが問題なのかを、現場からレポートしますね。
メタルって数ミクロンのオイルクリアランスを最適化するためのパーツなんですね、
エンジンにとってのメタルの重要性はみなさんもご存じで、だから開けて点検したく
なるんでしょうね、それは見たいよね、、(笑)
〇印の中にメタルがあります、いわゆるエンジンの基幹部、クランクや
コンロッドも見えますね、このエンジンはエンジン教室の教材でカットされた
モデル、モチロン普通はこんな中まで見えませんので(汗)
上の写真はクランクとブロックのメインジャーナル部のカットモデルです、青矢印の
ここにメインメタル(親メタル)が挟まれていますね。
クランクとコンロッドの連結部がコンロッドメタル(子メタル)です、
メタルはジャーナルとの接触面をオイルでフローティングして支持している、
とイメージして下さい。
回転するジャ―ナルに引きずられ粘性の有るオイルは先細りの狭いクリアランスで、
圧力(くさび油膜圧力)を発生しています、
そしてオイルの圧力(反力)によりジャーナルは浮き、メタルとは直に接しません、
間には油膜が形成されているからです。
半円形のメタル形状ですがこの写真よ~く見てください、
〇の端部、チョットずれてますよね、これとても重要なポイント、
この径方向の広がりが「メタルの張り」、
キャップからメタルが少~しはみ出している、円周長が僅かに長く作られている、
この周長の差を「クラッシュハイト」と言います。
この差は、締め付け時に正規となりコンロッドやブロックへのメタルベース背面の
密着性を高めています。
〇オーバーホール等で分解したエンジンは、
この張りやクラッシュハイトの残り量が最重要です!
張りが弱かったり、クラッシュハイトが無くなっていたりすると
コンロッドやブロックの中でメタルが動いてしまったり、裏面にオイルが入り
放熱できず焼き付きの原因に、この周辺の整備とチューニングは非常にシビアです。
また、メタルを組み付ける時の大事なポイントはキャップとメタルの裏側を
しっかりと密着させる、その為にキチンと脱脂する!
メタル裏にオイルが付いていると新品でもメタル剥離や面流れ、
スカッフの原因となります、
キャップを緩めてメタルを覗いて見る、と言う事は結果メタルのクラッシュハイトと
張りを無視する訳で「開ける前」と「再び閉めた」後では別のエンジンです。
メタルはバネ材じゃないからね、一度熱が入ったメタルは元のサヤには戻りません。
ここまで一般エンジンに共通するレポートでした、
ではそれではここからHondaのエンジン量産技術のご紹介です!
タイプRに採用されたHonda純正のタイプP8p、通称F1ブラックメタル、
オーバーレイ(メタル表面のめっき)で低フリクションと耐高荷重性を両立、
たぶん世界一の品質、サブミクロンの量産鍍金を駆使した生産技術のオンパレード品です。
メタル表面の模様はマイクログルーブでビーム照射法で成形、
表面に微小の溝を作ることで積極的に油膜確保を狙う設計になっています、
これはピストンスカート面と同じ手法ですね。
高回転、高荷重時の耐焼き付き性の向上などで優位性がある高性能メタルです。
ところで組み付け時のメタルの真円度はどの位??
実はメタルは上下方向は厚く、脇方向に行くに従い徐々に薄く作られているんです、
真円ではなくてCCレモン型だ、なんだかエグイ。
でもそんな構造にしたら、広い方の隙間からオイルが脇に逃げるんじゃないの?
実際のその差は20μの差で、よりすき間をくさび形にすることで
オイルの膜圧を最適化するそんな設計ノウハウが込められてるんですね。
もう一つ、日常の使用で何気なくメタル君にダメ―ジを与えてるのは、、、
えぇ?セルモーター?
セルモーターが直接キズを付けている訳じゃ無いんですよ、
そもそもエンジンが停止している時は油圧ゼロ、メタルにクランクが直に接触してます、
オイルポンプはクランクが廻らないと油膜が出来ず最初の約1秒、(クランク3~4回転)
は金属接触しながら回ってチョ~危険だぜ!
あのー、アイドルストップが採用されたエンジンGrはまた別のお話です、
エンジンの中は見えないけれど、一生懸命なメタル君、
高回転で高出力型のエンジンの奥の方で大活躍なんですよ。
Posted by 城本